京都国立近代美術館「上村松園展」

 まずは、春の「長谷川等伯」の次に今年楽しみにしていた展覧会「上村松園」展を見てきました。さすがは上村松園。よくどこかで展覧会が開かれる人気の画家ですが、今回は大規模な展覧会ということもあって結構な人が訪れていました。
 で、結論を最初にいいますと、かなり良かったです。昨年「上村松園・松篁・淳之 三代展」を大阪高島屋で見て以来、今度「上村松園」展をやるときは必ず見に行こうと決めていました。その思いもあったと思うのですが、これを実際に見てみると、思っていた以上にその凄さに圧倒されました。
 着物や人物描写の極めて細かく精巧なこと、驚くほどの集中力で描かれた見事な髪や着物の線、そしてなにより、人物の一瞬を切り取った画面ながら、その人物の内面性、精神面の強さ、不安感、希望、凛とした自信を持った姿を見事に描ききっているそのすばらしさはやはりさすがであると感じました。
 今回、代表作

  • 「花がたみ」(←かなわぬ恋に狂い発狂してしまった女性の話を題材としているが、実際に当時の精神病院へ取材に行き、表情やしぐさ一つ一つまでつぶさに観察し描き上げたもの)
  • 「序の舞」(←画家本人が「私が理想とする女性」と語っている作品。実は、松園の息子、松篁の奥様そっくりの顔なので、奥様をモデルとしていると思うと孫の日本画家の上村淳之さんが「日曜美術館」で語っていました)

などなどいくつも見ることが出来たのですが、それ以外で興味深かったのは、スケッチの数々でした。これまで色々な展覧会を見てきましたが、古今東西問わず、基本はスケッチにあるというのを学んできたつもりでしたが、この上村松園のスケッチには驚きました。例えば、舞を踊る舞妓のスケッチ一つとっても、あらゆる角度や高さから最低でも一つの用紙に15通り程度のスケッチが描かれており、何枚も描くことによって、あのわずかな「しぐさ」や「表情」で凛とした女性を描ききっていたというのに感嘆すると同時に、まだまだ自分自身も観察することが出来ていないなーと悟りました(別に絵描きじゃないですが(笑))。
 残念だったのは、代表作の一つ「焔」が後期の展示となっていたため見ることが出来なかったこと。今度機会があればぜひ見たい作品です。