神戸市立小磯記念美術館『開館20周年記念 生誕110年「小磯良平の世界」』

 前回マリーローランサン展を見に行って以来の訪問となりました。六甲アイランドに位置するので、わざわざ六甲ライナーに乗り換えていく必要があるのが面倒なんですが、しかし、この美術館は非常にゆったりとした時間が流れており、なかなか居心地の良い所であると思います。
 さて、今回の『開館20周年記念 生誕110年「小磯良平の世界」』は私が個人的に見たかった今年の美術展の一つで、結構楽しみにしていました。
 今回はじめて知った事実も多く、例えば、関東大震災の時に小磯本人は日本におらず、満州で写生旅行をしていた事実。親類縁者にいわゆる「名士」と呼ばれるような人物が多いことなど、小磯良平のあの純粋な気品のある画面は、裕福な環境に育ったというのが少なからず影響しているようで、これは、コローや伊藤若冲(フト、思い出せば経済学者のシュンペーターもそうですね)にも通じる裕福な環境であるがゆえに金銭面をぬきにした物事の本質や人間本来の気品、そして、自由な発想などを生み出せたんではないかと私は思います。
 回顧展なので、小磯作品を全体を通して見ることができたんですが、驚くべきはその精緻な筆力の凄さ。毎年いろいろ美術展を見てきていますが、上位の部類に入ると思いますね。特に、構図の見事さとモデルの衣服(着物であったり、バレエの踊り子の衣装であったり)の写実性の高さ。これは、実物を見なければ本当にわからないと断言できます。それほど、見事な描写でした。
 興味深かったのは、小磯良平はマネやコロー、さらにはフェルメールやカラヴァッジョといった画家たちに影響を受けたと本人自身が語っている点。特に、コローとカラヴァッジョについては、私もそれぞれ好きな画家であり、それを考えると、小磯作品に影響を感じる部分があると思ったりしました。
 最後に、この展覧会、今日は初日であったにもかかわらず、結構ゆったりと鑑賞できました。非常におすすめですね。