「ヤノマミ」 国分拓 NHK出版

 南米ブラジルのアマゾン奥深くにて古代からの生活を守り続ける「ヤノマミ」族に約150日にわたって密着取材したNHKディレクターのドキュメントの書籍版です。以前にTVで放映されたのですが、私は残念なことに見逃してしまいました。それもあって、本書を購入しました。
 読んでみてまず驚くのは、相手の言葉を知ることから始まるという気の遠くなるような作業でした。時には、ヤノマミ族によって殺されるのではないか?という恐怖や、いつ襲われるともわからない毒蛇や毒蜘蛛などといった危険に隣接しながらの密着取材の結果として見えてきたのは、現代社会では覆い隠されている欲望や衝動性、性行動などのむき出しの状態であったという驚きであり、古来本来の姿はこのようなものであったのか!!!という現代社会からは到底理解することも容認することも出来ない現実であることが次々と目の前で繰り広げられます。一例を挙げると、15歳で妊娠した女性が出産をし、まさに自分自身が生んだ子供を「間引き」するという現場をまざまざと見せ付けられ、筆者自身が精神状態をかき乱されたと告白する場面が出てきたりします。
 しかし、「間引き」の現実はあくまで我々現代社会側から見た見方であって、ヤノマミ族の世界では特に驚くようなものではなく、生きてゆくためには当然のごとく必要な行動の一つとなっているわけであり、我々からどうのこうのと言える問題ではないわけです。
 私自身、どう結論付けると良いのか?答えが見つからないのですが、今一度、我々の現代社会を見つめなおすキッカケになればよいかと思います。