「ロトチェンコ+ステパーノワ─ロシア構成主義のまなざし」展

 滋賀県立近代美術館まで「ロトチェンコ+ステパーノワ─ロシア構成主義のまなざし」を見に行ってきました。昔々、高校のときに学校の用事で滋賀の膳所高校というところまで行ってきた記憶があるんですが、その膳所高校のある駅から2駅目の駅で下車してバスに乗って美術館まで行ってきました。滋賀県は暑いのは暑かったんですが、琵琶湖があるためかさわやかな夏の風が吹いていまして以外に暑さは和らいだ感じがしました。
 で、肝心の展覧会ですが、ソヴィエト誕生の際にロトチェンコとステパーノワの2人の芸術家が「芸術の面から革命を側面支援しよう」というところから出てきた芸術とのことでした。コンパスと物差しのみで描かれた抽象画に近い作品からフィルム写真、建築のデザイン、洋服のデザインというようにかなり幅広い芸術創造であったことが見てわかりました。
 驚くのが、それぞれのジャンル、例えば写真であれば写真、ポスターのデザインであればデザインというように、現代の私の眼から見ても十分通用する、むしろ、先進的な部分もあると感じるほどインパクトのある作品が多数展示されていました。なかには、「このデザインの大本は、このロトチェンコとステパーノワからきているんだな(つまり、かなりの影響を受けている)」というものがいくつも見受けられ驚かされました。
 私個人的に興味深かったのは、『「労働の後の祝宴」を行うための場所のデザイン画』と『希望を持って将来のソヴィエトのモダンな建物として建てられるものとしてデザインされた建築デザイン画』があったのですが、前者はまさに「バーカウンターの店」であり、ソヴィエトでデザインされたものとは知らなければ、現代のどこかのバーの設計デザイン化と思ってしまうほど先進的なものでした。後者は、これまたモダンで先進的な現代建築に通じるインパクトのある建築デザインでした。しかし、現実にこれらの絵が描かれた後に、描かれた当時のような希望が、結果的に最後にはソヴィエトの解体によって終焉してしまったというのは皮肉な感じがしました。特に、建築デザインについては、その後の「スターリン建築」と呼ばれるニューヨークの摩天楼を模した高層ビル群とデザインを比べると私個人はかけ離れているように感じましたので、その意味では、初期の革命の熱気がまだあった時代の作品と見るのが正しいのかもしれません。
 とはいえ、全体を見てみて結論から言えば、現代のデザインは大いに直接間接にこの「ロトチェンコとステパーノワ」影響を受けており、未だにその領域から脱出できていない部分が多いとも感じると同時に、消滅したはずのソヴィエトで生まれたデザイン思想が資本主義社会で堂々と生きているのにも皮肉というか不思議を感じました。