大阪市立美術館「陶芸家 富本憲吉の世界」

 現在、大阪市立美術館で開催中の富本憲吉の作品展を見に行ってきました。今回、大阪市立美術館に富本憲吉記念館館長であった故辻本勇氏の収集した作品が、遺族の意向により寄贈されたことを記念して今回寄贈された全作品が展示されていました。富本憲吉は、京都に行った際に京都国立近代美術館の常設展において見ることが可能な作品なんですが、今回は、京都国立近代美術館所蔵品以外の作品を富本憲吉初期のころの作品から順を追って見ることが出来ました(ちなみに、今回は寄贈という形であるので常設展の料金で見ることが出来ました)。
 興味深いのは、初期の作品と中期。晩年の作品と進むにつれて、あたりまえといえばあたりまえなんですが、同じ白磁青磁の出来具合を見ても、素人目にも徐々に表面が奇麗になり見事な出来栄えになっていく様を垣間見ることが出来ます。また、晩年に近づくにつれて以前に京都国立近代美術館でみたような、見るものを圧倒する色彩やデザインを使用した作品が出てくるにも驚きました(つまり、私が、京都で見た作品はどうやら晩年のころのものが多かったのかもしれません)。
 この後、富本憲吉展を見た後に、それ以外の常設展(中国の仏像、小特集としての戦・争画、印籠、岸田劉生青木繁などなど)も見たのですが、この大阪市立美術館の収蔵作品の幅とその質の高さに驚かされました。中国の仏像は以前にも見たことがあったんですが、それでも、以前に見た記憶が無いものも何点か展示されていたり、普段は見ることが無い仏像の裏側をガラス越しではなく見ることが出来たりと、充実した展示となっていました。また、戦・争画と区切っているのは戦争画や戦(いくさ)というように時代にとらわれずに、描かれた争いの絵画の展示となっており、大阪夏の陣の火炎に包まれる大阪城内の淀君や、太平洋戦争時の戦争を鼓舞する戦争画、また、当時の朝日新聞の記事が展示されており、いかに、マスコミも含めて戦時体制下に置かれていったのかを知ることが出来ます。
 後半は、印籠や象牙の小物の展示(これもかなり多くの展示がなされており、圧巻でした)、岸田劉生青木繁の作品なども見ることが出来ました。
 全体的に見て、常設展とは思えないほど充実した展示となっていたのですが、平日の上に気温が低く寒かったために、観覧に訪れている人は本当に少なかったです。まぁ、私としては、ゆっくりと鑑賞することが出来たのでよかったんですが(笑)