京都国立近代美術館「山口華楊展」

 引き続いて、京都国立近代美術館にて「山口華楊展」を鑑賞してきました。実は、「山口華楊展」は今秋の個人的な要注目の展覧会でした。この山口華楊は猿などの動物画や写生画が有名な日本画家で、近代日本画を代表する一人です。とはいえ、隣の京都市美術館のエルミタージュよりは地味といえば地味なので観覧者は少ないんではないか?と思って行ったんですが、ところがどっこい結構大入り。しかも、明らかに学生と思われる人が大半。これはなんだろう???と考えたら、皆さん結構メモをとっている人が多い。要するに美大生の画学生だったわけですね。授業で鑑賞してくるように!と課題を出されたんでしょうか?今回は、この学生さんたちがどんな鑑賞の仕方をしてるのかを見るのもなかなかおもしろかったですね。
 で、肝心の感想ですが、いやーなかなか良かったですね。例えば、動物の目が「動物の目」ではなく私には「人間の目」をしているように感じました。これによってただ単純に動物の動きを写生したというレベルを超えた親子の慈愛を感じると同時に、人間や動物という垣根を超えた「本当に大切な物は何なのか?」という問の一つの答えを見ているように感じました。
 もう一つ、この山口華楊展で興味深かったのは、絵のタイトルをちょっと変わったものにすることにより、絵に対するイメージが大きく膨らみ世界が想像以上に膨らむこと。例えば、砂漠に目を閉じたラクダの絵があったんですが、タイトルは「望郷」。すると、砂漠で単に休んでいるラクダではなく、ひょっとすると異国の地にキャラバン隊で連れてこられたラクダなのか、はたまた、鳥取砂丘にいるラクダで遠く中東や中央アジアの出身地に思いを馳せているのか?はたまた、これを見て単身赴任の人などは自身と思いを重ねるのか?といった具合に、いくらでも世界が広がるわけです。
 いやー、ホントに目からウロコの部分が多い展覧会でした。