登山の哲学〜標高8000mを生き抜く〜 (著者)竹内洋岳 (出版)NHK出版

 今年の最初にNHKーBSで放送された「グレートサミッツ」(その後、総合テレビでも短縮版を放送)。ここで取り上げられていた、日本人として初めて8000m以上の高山14座に登頂を果たした登山家の竹内洋岳さんの本です。
 登山家になった経緯や、常に危険と隣り合わせの高山への登山の話など、グレートサミッツを見た方なら興味深く読むことが出来ると思います。そのなかでも、「組織登山からグループ登山」へ変化していくという話はなかなか面白かったですね。お金と時間と人を大量に動員し確実に登頂を目指すという組織登山に対して、メンバーを公募し、少ない人数で最低限の装備で機動性を高くして柔軟に計画を変更できるグループ登山への変化が14座登頂への成功のいち員であるという著者の話は、登山に関係なく、注目できる部分ではないでしょうか?
 また、登山は「想像」のスポーツである。というのも、興味深い指摘でした。山では常に状況が変化して対応を臨機応変にしなければならない、でなければ、「死」の直結する。では、その想像とは何か?それは、危険回避の想像であり、より効率的に登山する方法の想像であり、経験ではなく想像することにより新しい発想が生まれてくる*1というのは面白い視点であると思います。

*1:ただし、単純作業のような繰り返しの作業の場合は経験のほうが有利という指摘もされています