-名画で読み解く-ハプスブルグ家12の物語 中野京子 光文社新書

 先日見てきたハプスブルグ展のハプスブルグ家の肖像画に焦点を当てた12人の王族の話です。スイスの小さな豪族に過ぎなかったハプスブルグ家がいかにしてイタリアからドイツ・オランダ・スペイン・ブラジル・アルゼンチン・カリフォルニア南部などにいたる巨大な帝国を築き上げ650年間も治世を続けることができたのか?そしていかにして崩壊していったのか?という側面を12人の王族から見ていくという本書ですが、新書ということもあり、かなり読みやすい内容となっています。
 政略結婚という戦略で領土を拡大していく様と「政略結婚」であるが故の謎の不審死の数々、また、王族の「血」を守るためがゆえの近親結婚を重ねた末のスペイン王家の滅亡といった話から、有名なマリーアントワネットやエリザベートの悲運な物語など新書にしては結構幅が広い内容になっています。
 しかし、当時の王族は毒殺の恐怖や好きでも無い相手との強制結婚、「権威」としての宮廷のしきたりなどなど、一見華やかそうでいて息苦しい生活だった事実は、それぞれの立ち位置でそれぞれに影の部分があるんだなーというのを感じさせると同時に、自分自身がこんな王族じゃなくて良かったと思います(笑)。