無縁社会〜無縁死三万二千人の衝撃〜 (編著)NHK「無縁社会プロジェクト」取材班 (出版社)文藝春秋

 今年1月に放送されたタイトル通りのドキュメント(反響が大きかったために、何度か同種の番組が放送されたり再放送がされたり、その他のマスコミ等でも同様の特集が組まれたりしました)の書籍版です。TV放映された内容をさらに補完した内容になっており、さらに読むと驚きが増えます。
 本書を読んでみると、放送では触れられていなかった部分が明らかにされた部分も多数出てきます。一例を挙げますと、

  • なぜ?地方から東京に出てくることになったのか?そもそもの理由→借金(自分自身の借金と言うよりも、連帯保証人となり借金を背負うようになった等)、離婚、実家の家業が倒産し地元にいづらくなったなどなど
  • 無縁死した人のお骨を受け入れているお寺→首都圏の自治体より「そちらの檀家さんで・・・」というような問い合わせが余りにも多く、また、受け入れないとなると最悪「廃棄物」として処理される可能性もあるとの事を聞くにつけ、「ほっとくわけにはいかん」とのご住職の意思で受け入れが行われている。
  • 大手都市銀行に営業職として長年勤め、しかし、定年間際に熟年離婚し退職と同時に老人ホームに入った方の場合。→仕事一筋で来た結果の離婚であったとご本人は語っておられたが、特に

(ここより引用)

営業成績は家族が家を出て行ってから、ますます上がったという。

(引用ここまで)
という部分が印象に残ったんですが、さらに、この後の記述、銀行退職後に凄く電話がよくかかって来るようになったそうなのですが、その電話の内容が
(ここより引用)

  • 会社を退職された後、残りのお金を寄付しませんか?
  • 有効に投資してみませんか?
  • 心の安らぎをもとめに会合にこないですか?

(引用ここまで)
ご本人は、この出来事を通じて、自分以外にも同じような人が多く存在しているだなということを感じたそうです。
また、新たに知った事実としては、

  • 直葬→お坊さんも呼ばずに火葬炉の前で親しい人たちのみで「お別れ」を行って直ぐに火葬を行う葬儀方法。費用が10〜20万円程度で済むそうで、本書の記述では

(ここより引用)

「東京都内で行われている葬儀のうち直葬が占める割合は、すでに三割に達しているという。」

(引用終わり)
とのこと。

  • 生涯未婚の急増

私自身、既に、この事実は数年前より報道や、民間シンクタンク等の情報で知っていたのですが、本書と関連して改めて
考えてみると、自分自身考えてしまうものは確かにあります。将来的には、2030年には50歳の人で3人に1人が独身者になるというのが統計上から割り出されているんですが、要するに、私自身を含めて我々世代であるということを再認識し、改めて考えてしまいました。

 本書を読んでいると、色々考えてしまうのは仕方が無いんですが、しかし、本書のようなレポートが出てくるようになってきたというのは、ある意味で現状の軌道を修正してゆく重要な第一歩のきっかけとしては大切なんじゃないかと思います。これは、今年の春に「「絵画の庭〜ゼロ年代日本の地平から〜」」を見に行った際に、色々な表現の中、一つ現在の文化に対して皮肉めいた表現が出てきていたり(←奇麗な里山が裏側では建設機械で削り取られ高速道路が作られていたり、ひなびた銭湯でいかにもオシャレな貴婦人がオイルマッサージを受けていたり)、最近では、東京ファッションショーで白い仮面をかぶったモデルが今流行の服を着飾ったというように(←つまり、顔が見えない⇒みんな同じものを着ている、個性が失われている)、様々な分野で出てき始めているように感じます。これらの動きにもこれからは注目していく必要があると感じています。