あっぱれ技術大国ドイツ (著)熊谷徹 (出版)新潮社

 私はドイツといえば「マイスター制度」「グリーンツーリズム」「環境先進国」「第二次大戦後の経済成長への道」というように、よく日本と比較されることがある国というように認識があり元々興味があった上に、本書の「技術大国」というタイトルに惹かれて購入しました。
 読んでみてよくわかったのは、ドイツにおける質素・倹約・勤勉という日本人と共通する部分が多いとされる特徴は、ドイツにおいては過去において宗教改革の発祥地という点が関係している可能性が高いこと、また、環境という面では既に1980年代頃からアパートの廊下などの電灯はスイッチを入れてから5分経過すると自動消灯する仕組みを整えていた事、勤勉においていは、時間の厳守(すなわち、時間を効率的に使うことにより最大の生産性をあげる意識。長時間の労働はそれだけ不効率が多いとの認識があり上司からは低評価を受ける)などなど、日本の現状と比較しても真逆に位置するような感じを受けました。
 特に、社会保障政策・労働政策においては、独特の政策を維持しており(これは2008年のリーマンショック以降も大きな変化はなかった)、高い負担にもかかわらず、一人当たりのGDPが日本よりも大きいというのは驚きでした。
 また、過去の偉大な発明家(中には、私でも知っているヴェルナー・フォン・ブラウンなど)の歴史にも少し触れられており、発明大国としてのドイツの底力を感じさせられるものがあります。
 現在、日本では企業の資本集約化・労働集約化というような規模の利益の方向へと進んでいますが、ドイツにおいては逆に家族経営のような7〜8人の小規模企業(言い換えれば、知識・技術集約的)の企業に対して改めて注目がなされているなど、参考となるべき事例も挙げられていました。
 本書の内容は、文庫でコンパクトにまとめていることもあり、より深く知るためには別途調べる必要はありますが、入門書としてはわかりやすく読みやすい本であると思いました。