パンとペン 〜社会主義者・堺利彦と「売文社」の戦い〜 (著)黒岩比佐子 (出版)講談社

 昨年の発売から、新聞・雑誌等々に取り上げられ、私が実際に購入したのは去年の年末頃だったのですが、非常に情報量が多い大著ということや、資格試験の勉強をしていたことなどが重なって、結局、この時期まで読み終わるのに時間がかかってしまいました。
 現代人の我々からすれば「大逆事件」「幸徳秋水」「大杉栄」というキーワードは日本近代史の知識としては持っているものの、社会主義者である堺利彦がまさに国の弾圧を受けていた暗黒の時代に、いかに「志」を捨てることなく、しかし、生きてゆくために売文社という媒体を生み出し、いかにして「したたかに」「ユーモラス」に生き抜いていったのか?を本書は描いています。
 本書を読むと、どのような時代であっても、常に状況をリアルに見つめる大切さと、柱となる「志」を持ち続ける事を強く感じました。とにかく、何年後かに読みなおすことがあるだろう本であると思います。