京都国立博物館「法然 生涯と美術」

 最後に、本日のメインの2つ目、「法然 生涯と美術」を見てきました。こちらの展覧会は「親鸞展 生涯とゆかりの名宝」とは異なり、国宝の「法然上人絵伝」(法然の遺徳を伝えるために製作された絵巻物)を中心とした「絵」を中心とした展示となっており、分かりやすい内容でした。この「分かりやすい」というのは重要な点で、当時の人々も「分かりやす」くて「身近に」感じられることが信仰心の原点にあるのが感じられます。これは、「カラヴァッジョへの旅〜天才画家の光と闇〜」で、プロテスタント宗教改革に対抗してカトリック教会が「身近な存在としてのキリスト教」を強く推し進めた際にバロック芸術が開花したことからもわかるように、誰にでもわかるように「法然」を身近な聖人化するのにこの絵巻物は寄与しているのは間違いがないと思います。
 この、絵巻物で興味深いのは、最晩年に法然が往生するときの前後の場面で、紫雲の雲が現れたり、阿弥陀如来からご来光がまさに往生する法然に向かって挿し込む場面など、まさに、カラヴァッジョが描いたキリストの「光」そのものではないかと感じました。どうも、古今東西問わず、このように「光」で神聖さを表現するのは共通してるのでしょうね。
 また、法然の没後に作られた阿弥陀如来像の体内からは身分・地域を問わず多くの名が書かれた書状が出てきていることからもわかるように、それだけ、当時の人々に与えた影響は大きいものであったというのがよくわかります。ちなみに、この法然も、親鸞同様に厳しい弾圧に会い、弟子が処刑されたり自身も土佐に流刑になったりしています。しかし、それでも当時の人々は法然の教えに感化されたというのはそれだけ身近な存在と感じたからではないかと思います。
 このように全体的に、絵巻物を中心とし仏像などの展示で、年代順別となっているので、わかりやすい展覧会であると思います。