ランド 〜世界を支配した研究所〜 (著)アレックス・アベラ (出版)文藝春秋

 アメリカのシンクタンクランド研究所の生い立ちから現在に至るまでの歴史とアメリカという国との関係について書かれた本です。
 本書を読むまで知らなかったのですが、ランド研究所は元々、第二次世界大戦において日本空爆を計画する過程において生まれてきたこと、戦後の経済理論の代表的なものとしてゲーム理論や最小被害低減策としてのフェールセーフという考え方を生み出したことなどなど、驚きの連続だったのですが、何が一番驚いたのかといえば、ランド研究所出身の研究者が1980年代ごろには陰陽問わずレーガン政権を支える立場に入り込み、1980年以降の冷戦の終結とその後の新自由主義的経済のレールを敷いていった点でした。特に、自分たちの論点を世の中に広める上でのマスコミの利用や大手企業幹部との連携など、まさに軍産複合体の一面を垣間見る部分が興味深く、日本の現状とも重なる部分を感じました。
 しかし、今や、アメリカの一極だけの力では世の中が動かない現状を考えると、このランドが産み出してきた合理主義的世界観についても、個々の地域や国における実情に応じた修正が必要な時期に入ってきている事を強く感じました。