叙情と闘争 (著者)辻井喬 (出版社)中央公論新社

 本書が出版された当時、結構いろいろなところで書評に取り上げられていました。今回、文庫本として改めて出版されたので購入して読んでみました。結論を先に言えば面白い。昭和期の一時代を築いたセゾングループの総帥である辻井喬こと堤清二*1の自伝的な本書は、昭和期の消費を垣間見る資料としても興味深い内容となっています。
 堤清二氏の最大の発明は「無印良品」だとよく言われていると思いますが、これは、企業人と文筆業という2足のわらじを履いていたからこそ生まれたように感じるのと同時に、それゆえに、セゾングループの解体へとつながったようにも本書を読んで感じました。
 それにしても、本書の中に登場する人物たちから垣間見る人間性*2は今ではあまり見かけることが少ない人達のように感じたのは私だけなのでしょうか?

*1:辻井喬は文芸活動の時のペンネームであり、堤清二は企業人としての姿となる

*2:道徳主義的であったり、純粋であったりする